第24話 ひまわり

前回は高松の池の広場に立つ「望み」像をご紹介しました。

今回は池を挟んでその対岸にあるもうひとつの銅像「ひまわり」についてお話します。
「ひまわり」は、幼い女の子が向日葵の花を持って遠くを見つめている立像です。

像の台座にある解説文を見ると、これは第二次大戦後にシベリア抑留を課せられた人々の慰霊のために作られたとあります。

戦争終結後、ソ連によって極寒の地に連行され強制労働と収容所生活を余儀なくされた、いわゆるシベリア抑留者は岩手県内だけで8千人にものぼるそうです。
そのうちの1200人を越える人びとが、過酷な労働と飢え、寒さにより命を失い、未だ異国の凍土に眠っています。

この像はシベリア抑留犠牲者の慰霊と世界の恒久平和を願って、自身もまた抑留体験者であった彫刻家・佐藤忠良氏により制作されました。
向日葵を手にして、はるか彼方を見つめる少女の視線の先には、ふるさとを象徴する岩手山が悠然とそびえています。
少女の瞳は無垢なようでありながらも、哀しみと無常感が滲み出ています。

撮影中、この像を熱心に見つめる男性を見かけました。
像をいろいろな角度から眺め、台座の解説文を何度も読み込んでいます。
あまりに真剣なご様子なので、わけを聞こうと話しかけてみたところ、快くインタビューに答えてくれました。

お話によれば、男性のお父様がシベリア抑留体験者で、最近91歳でお亡くなりになり、その事を偲びにこの像を見にきたということでした。
お父様は約三年間の収容生活を送ったそうですが、帰国後も抑留時の話はほとんどしなかったといいます。
抑留生活がどれほど過酷で極限状態だったのか計り知れないと、ご主人は静かに語りました。

この像の前で、このような話を伺えるとは思ってもみませんでした。
遠い過去だと思っていた戦争やシベリア抑留が急に現実のものとして迫ってきました。
桜の花に囲まれた「ひまわり」像から、犠牲になった人々の叫びが聞こえてくるようでした。

インタビュー後、いつの間にか子どもたちがやって来て、「ひまわり」像の周りでかくれんぼを始めました。
その姿があまりにも無邪気で可愛らしく、尚のこと今ある平和について考えさせられました。

実はその後、シベリア抑留について更なる出会いが続くのですが、それはまた次回お話します。

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