第23話 望み

この映画の撮影中、高松の池でいろいろな人と顔見知りになりました。

その中に、毎朝池の畔の広場でラジオ体操をする人たちがいます。
リーダーは高齢の男性で、定年退職後に毎朝高松の池でラジオ体操をしているうちに、自然とグループが出来上がったということです。
もう20年近くもここで続けているそうです。

さらに毎朝の体操で培った体力を試すために、同じ仲間で山登りにもチャレンジしているとか。
高松の池に集まる皆さんは本当にお元気な方たちばかりです。

そんな皆さんが体操をする広場に、親子4人の家族を形作った銅像があります。
池をバックにして立つこの銅像は、桜の樹の下で独特の雰囲気を漂わせています。
よく見ると、手前の少女の掲げた手の平に鳩が載っています。
この銅像には「望み」という名がつけられています。

「望み」は1995年、戦後50年を契機に二度と戦争をしない、二度と核兵器を使用しないという誓いを込めて、岩手県民2万人の寄付により建てられました。
岩手出身の彫刻家・舟越保武氏の監修のもと、増山俊春氏によって制作されました。

「望み」像は、高松の池で一番賑わう場所に建てられていますが、普段あまり顧みられることの無い印象を受けます。
事実、この前を通る人たちに「望み」像について聞いてみると、ほとんどの人が気にも留めていないことが分かりました。

「無名碑 MONUMENT」では、この彫刻の前で「原子力」というキーワードで繋がる戦争と震災についての見解を隕石学者が語ります。
(以前紹介した「月の石・火星の石展示館」の館長・矢内桂三先生です)

それは華やかで祝祭的なお花見の空間に、突然ぽっかりと穴が開くようなお話です。
散りゆく桜の下で、「望み」像はその願いの通り、平穏な日常に溶け込んているように見えます。

時に、本物の鳩が彼らの頭上で羽を休め、平和の象徴そのままの光景を生み出します。
しかし、よく見るとどこかに違和感を感じます。
鳩の糞の痕跡が、彼らの頬を伝い、消えないシミとなり残っています。
まるで銅像が涙を流しているようではありませんか。
そんなふうに見えるのは、いまだにこの世界から戦争や核兵器が無くならないからでしょうか。

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