第22話 MONUMENT

今回は映画の題名にあるMONUMENTについてお話します。

高松の池の周辺には多くの記念碑や銅像などのモニュメントが建てられています。
それらの大半はなぜか戦争に関係しています。

また、以前紹介したように「桜霊閣」という地蔵尊があったり、日露戦争の英雄・横川省三の銅像の台座だけが残されていたり、豊かな自然と対比するかのように、象徴的な人工物が点在しています。

人工物ではありませんが、池を取り巻く桜並木も戦勝記念で植えられたいわば記念碑的なものです。
そもそも高松の池自体が人の手によって作られた人造池です。

私はこれら全てをモニュメントと捉えました。
高松の池のモニュメント巡りが、実はこの映画の核になっています。
様々なモニュメントの中で、最初に関心を惹かれたのは、池に隣接する図書館の駐車場に建つ村上昭夫の詩碑でした。

岩手生まれのこの詩人のことは知りませんでしたが、私と同じ苗字であることに縁を感じて興味を持ちました。
村上昭夫をネットで調べてみると、戦争体験や結核の闘病生活など不遇な人生を送りながら、生涯でただ一冊の詩集を出版したということが分かりました。

その詩集の名は「動物哀歌」。
これを知った時、私はひらめきました。

これを高松の池を舞台に映画化しよう。
例えば、この本にに綴られた詩を、高松の池に来た人たちに朗読してもらい、周辺に棲む生き物の姿と対比させてみてはどうか。

そう思い立ち、図書館から「動物哀歌」を借りて読んでみました。
一読して、私の考えが浅はかだったことに気づきました
村上昭夫の詩の世界は鮮烈かつ壮大で、切実な生の尊厳を謳っていました。
それは詩として完成された表現で、映像化など出来ようのないものです。

それならばどうするか?
考えた末、どうもしませんでした。
高松の池にほとんどノープランで赴き、ひたすら池の周りのモニュメントを撮影していくこと、それだけを実行しました。

更にそこで出会った人たちにランダムに声をかけ、高松の池にまつわる話や思い出を聞き出しました。
その集積が「無名碑 MONUMENT」です。

この映画では、様々な人が語り部となり、独自の視点と語り口で自分の物語を紡いでいきます。
そこには個性豊かな人柄と共に、その人が歩んだ人生さえ滲み出ます。
市井の人々の言葉が詩のように響きます。
村上昭夫の詩の映画化は叶いませんでしたが、別の形で作品に詩を取り込みたと思います。
ぜひ、高松の池の人々の詩を映画館で感じて下さい。

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